今、数学をめぐる情勢は世界で大きく変化し、数学への期待が高まっています。科学技術の高度化への対応や現代社会につきつけられている複雑な諸問題の解決に、もっと直接的に数学を応用し、イノベーションを生み出すことに大きな期待がよせられているのです。
たとえば、計算機の高速化によって、瞬時に大量のデータ収集・集積が可能となってきました。データ爆発、情報ビッグバンなどと呼ばれています。今、求められているのは、膨大なデータから有益な情報を引き出すために、隠されている構造を探り、データ処理のスマート化を促す数学的手法です。また、高度に発展した科学は細分化の一途ではないでしょうか?異なる分野の偶然の出会いが意外な進展を生み出すことはよく知られています。
しかし、個別化され、細分化された分野の壁を論理的に乗り越えようと考えるのなら、偶然の出会いに頼るのではなく、科学の共通言語である数学を糊しろとして駆使するしくみが必要になります。数学は異分野の橋渡しをする部分からも新しい理論を生み出すことができます。数学は異なる分野で使われている手法に類似点を見出し、洗練し、その手法を格段に高度化することができます。数学の汎用性と抽象性の強みがまさにそこにあります。
逆に、数学者が理想の世界で議論してきた物理現象が、実験技術の進展によって実現可能になってきたという見逃せない側面もあります。時代は、数学と実世界が歩み寄ってきています。数学と諸分野との連携強化の世界的潮流や国内情勢の展開は、スマートイノベーションに向かっている時代が求めているものなのです。
本プログラムでは、諸科学の共通言語である数学をコアとする分野横断型の研究を推進し、イノベーションにつなげる仕組みを構築することを目的としています。特に、
数理材料科学・数理生命科学・ITコミュニケーション・社会環境システム
を重点4領域とした融合的分野において学内外の連携を発展させ、既存の手法や視点の限界を超える新たな展開を目指します。さらに、研究の現場に参画させることで複眼的視野を備えた、次世代の若手研究者を育成することも目的としています。
本プログラムの実施にあたって部局横断的な協力体制が可能となったのは、多くの関係者のご理解とご協力の賜です。この体制を最大限に生かして、真に異分野融合をめざし、総合大学としての東北大学の学術基盤の強化を通して、学際的・融合的研究の発展に微力ながら全力で取り組んでゆく所存です。今後とも、ご指導、ご鞭撻のほどをお願い申しあげます。
研究リーダー 尾畑 伸明 (情報科学研究科・教授)
本プログラムの重点4領域の1つである「数理材料科学」は、
と密接な協力体制の下、我が国におけるonly one を目指してまいります。